現代に病をどう説くか

現代に病をどう説くか・・・臓器移植の観点から

はじめに

現代人は健康という言葉にとても敏感である。様々な健康食品や健康グッズがよく売れ、また健康情報もあふれている。まるで「健康のためなら死んでもいい」と言わんばかりの様相を呈している。そこから健康で長生きすることが最高の価値であるかのように錯覚してしまう。従って病気やそれに続く死は敗北と見なされるのであり、その延長上に平成12年に施行された通称『臓器移植法』がある。以来日本国にでも既に10例以上の脳死者からの臓器移植が行われている。この頃ではマスコミも取り上げなくなってしまった。

佛教的生命観・・・心身一如、生死不二

佛教では生と死を対立するものとは考えていない。生も死もいのちの姿の裏表であり、別ならざるものである。そして佛教では人間が生まれて死ぬというその全体を《いのちの営み》と見ている。つまり「みなやがて死すべき無常なものである」ということを、まず問題提起しているのである。

そもそも佛教では人生を「四苦八苦」というように、すべてが苦であるという自覚から出発する。釈尊はその原因はこの世のすべてが「無常=空」なものであることに気づかず、われわれがこの世での生や欲望に執着する点にあると考えた。だからこの世は無常であるという正しい認識を持ち、欲望に過度に執着せず、道理にあった正しい生き方を説く。その観点から言えば他人の臓器を貰ってまで生き延びたいという発想は、この世の生に対する過度の執着以外の何ものでもない。本当になすべきことは、生に執着することではなく、自分に与えられた寿命を素直に受け取り残された生を執着を離れて静かに生きることである。

佛教の基本的な考えに立つならこういうことになろう。しかしそう簡単に生への執着を断ち切れる人は、殆どいないだろう。現代文明は「もっと、もっと」と欲望や快楽を満足させることで発展してきた。その延長上に臓器移植はある。頭ではわかっていても、この世で1秒でも長生きしたいと願うから、煩悩の固まりである普通の人間が自分の生に執着して臓器移植を望んだとしてもそれを責めることは出来ない。しかしそれでも佛教の基本的理念にたてば、現代文明の根本が間違っていることになるし、臓器移植はやはり否定されなければならないだろう。

医王と呼ばれた釈尊

釈尊は医王と呼ばれ多くの人を病から救ったとされる。それは医者が病気を治すのとは根本的に違う。医者は治せる病気しか治せない。しかし釈尊はすべての病気を治したとされる。それはどういうことかと言えば、病気を病気のままで引き受けていくということ、言うならば生きていればこそ病気になるのだという真実への気付きであろう。はっきり言ってしまえば苦しい病気、不治の病で真いかなければならないときは、それをしっかりと受け止めていくと言うのが、釈尊の立場ではないのか。

この体は授かったものであり、私たちのいのちは基本的に私たちのものではないと言うのが、佛教の基本的立場であろう。だから「わたしはどうせもうすぐ死ぬのだから、私の臓器で助かる人がいるのなら是非役立てて欲しい」というのは一見美談だが、それはいのちを私物化していることにならないだろうか。私たちの存在は与えられたものであり、与えられたものを私が勝手にどうこうしようと考えることに問題があると同時に、なかなか思い通りにいかないのもまた事実であろう。事実釈尊自身も旅の途上で七転八倒の苦しみの中で、半ば野垂れ死にしたではないか。

本当の救いとは・・・ 小慈は大慈を妨げる

やがて死んでいく人間を死なないようにするのが慈悲ではない。自分もやがて死すべきいのちを引き受けて生きているのだということ、「人は病気死ぬのではない、寿命で死ぬのだ」と決定(けつじょう))すること、そういう大きないのちの真実に目覚めさせていくというのが仏の慈悲なのではあり、真実の救済なのではあるまいか。釈尊はそういう世界を説き得たからこそ医王と呼ばれたのだと思う。「小慈は大慈を妨げる」という言葉があるが、死んでいく人の臓器をこれから生きようとする人たちのために使うのは結構だと、手放しでは賛成できないもっと大きな問題がここにはある。

東京・大徳寺派・見城宗忠

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