「絶対基準」

『題名のない音楽会』で先日まで司会を務めていた指揮者の佐渡裕さんは、小さい頃から音楽に親しみ、やがて指揮者になることを夢見て小澤征爾やバーンスタインなど世界的な指揮者に師事しました。様々なサポートを受けながら各地の楽団を指揮して実力を発揮し、氏の飾らないおおらかな人柄と豊かな音楽性で世界中のファンを魅了しています。そして今秋からはウィーンの名門楽団の常任指揮者に就任しました。その佐渡さんに
佐渡裕少年に誇れる演奏会がつくれたかどうか、それが僕のなかの絶対基準になっている
という言葉があります。まさに生き馬の目を抜くような厳しい競争を勝ち抜かなければ、活動の場が与えられない音楽界にあって、佐渡さんの支えとなっている価値基準は、他人の評価や競い合いではなく幼い頃に思い描いていた自分の姿にちゃんと応えているかどうかだというのです。大リーグで長年活躍するイチロー選手も、かつて首位打者争いをしていたときに「人の打率が気になりませんか?」と問われ「全然。だって他人の打率は自分でコントロール出来ませんから。比べるべきは人と自分ではなく、昨日の自分と今日の自分です」と佐渡さんと同じようなことを語っていました。
「他に依止するものは動揺す」(道元禅師)といいます。私たちは人の評価に振り回されたり、あるいは人よりもより速く、より多くを手に入れようと、気づかないうちに人との競い合いに追い込まれてしまっているのではないでしょうか。「あの人はあんなに大きなお屋敷に住んでいるけれど、学歴は私の方がずっと上!」などと、人と自分を比較して落ち込んだり有頂天になったり・・・。それでは本当の安心(あんじん)は得られませんよ、ということでしょう。佐渡さんやイチロー選手は、そこをサッと飛び越えているように思います。それは長年の鍛錬が培った「自分のなかには信じるに足るものがある」との強い信念(自信)によるものだと思うのです。
私も年明けには還暦を迎えますが、これは生き方のギアチェンジする時だと思っています。何故ならこれまで生きてきた分の時間は、もうこれから先は絶対にないのですから。多感な少年時代、家にも学校にも居場所がないなかで、縁あってこの道を歩いてきた私ですが、さて漠然と「こんな坊さんになりたい」と考えていた忠彦クン(旧名)に恥ずかしくない生き方をしているかどうか、今宵佐渡さんの振る「第九」を聴きながら、来し方を振り返り行く末に思いを遣ってみましょうか・・・。                                                                                            2015年12月

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