先日国立劇場で久しぶりに文楽公演『妹背山婦女庭訓』を見ました。後半だけでも五時間の長丁場です。義太夫節が心地よくて半分は眠ってしまうのですが、今回は前から二列目という席だったので、間近に人形遣いさんを見ることが出来ました。ご存じのように文楽人形は遣い手さんがそのまま立っているのですが、遣い手さんは無表情なのに、人形の顔は微妙な角度で全く違う表情を見せます。指先のちょっとした仕草で喜怒哀楽を見事に表します。見とれているうちに次第に人形しか見えなくなってくるのは応に名人芸です。文楽は歌舞伎と違って家柄ではない実力の世界です。二十年、三十年やってもまだまだ若手と言われる世界ですから後継者も少なく、特に語り手は危機的状況とか。どこかの市長さんが「生産性のない文楽には補助金を出さない」と、人間国宝の演者さんたちを前に言い放ったことがありましたが、文化へのリスペクトを欠いた彼に底の浅さを感じたのは私だけではないはずです。
△土曜坐禅会 15日・29日 午前7時より
△日曜坐禅会 9日・23日 午前7時より
△暁天坐禅会 毎朝5時より6時まで
△写経会 4日 午後1時より
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今 月 の 言 葉
この身風前の灯火の如し 何ぞ執着有らん
この質水上の沫の如し 何ぞ愛心有らん (源信『空観』)